20120816
財布を無くしたために、免許とその他の再発行のため都内を奔走し、夜中高速バスに乗るため、渋谷の路上で待つ。高速バスの旅は何年ぶりだろうか。アミー号という、いかにも大阪の会社っぽい冗談みたいな名前のバス車内に乗り込むや、日中の疲れのため、爆睡する。
20120817
朝6時、起きたら既に京都着。久々の京都だ。しかし今回の旅は京都ではない。ゆっくりする間も無く、山陰本線に乗り込み京都を後にする。
目的地はまだまだ遠い。車窓は何時の間にかのどかな田舎風景。
しかし何故かローカル電車は満席。
三時間ほど電車に揺られ、目的地に着、と降りると、駅を間違えた!。
しかも二駅すっとばしてしまっていた。仕方なく間違えて降りた豊岡駅周辺をぶらぶら。
そう、ここは兵庫県でほんのちょっと日本海に面しているあたりに来たんですね。
せっかくなので、街を探索途中下車の旅。おれは断然途中下車の旅派だね。
なんてったってナレーションがいいから。
アーモンドトーストが美味しい茶店でくつろいだ後、豊岡をあとにし、再び駅へ。
次の便を女子駅員(可愛かった)に訪ねたら何と1時間後。だという。
すみません、と謝られたが何、君は悪くない。仕方なく改札前のベンチに座っていたら、谷村新司がうっとり見上げる玄武洞のポスターが目に入った。
この近くにある玄武洞はいいぞ、と、訴えかけてる観光ポスターだ。行き先は
逆だが、時刻表をみたらなんともうすぐ到着。迷わすのりこむことにした。夏休みを満喫しよう。
玄武洞までは豊岡から一駅。しかし玄武洞到着前にまた浮気心が頭を擡げた。今持っている切符で次の城崎温泉まで行ける。この暑さで汗ダクダクだ。ひとっぶろ浴びてさっぱりしてえなああと、洞窟をすっとばし温泉に行くことにしたよ。
温泉駅の改札をみると、何と浴衣の姉ちゃんが立っていた。見えるかな?。
何でもここのメーブツらしい。時刻表を確認すると戻りの電車は、あと1時間後。
外湯一つくらいなら浸かれるべ、と城崎温泉街を突き抜ける。
今日の最初で最後の一番ブロはここに決めた!
洞窟があるという「一の湯」確かに風呂場に洞窟はあったが、そこらのスーパー銭湯でも
ありそうな代物だった。ならばいっそ原始的な岩風呂でも用意してもらいたかったが
洞窟風呂に惹かれて入ったのは他でもない、この俺様だ。
薄い垣根の向こうが女子ぶろで。女子大生風の声が聞こえてきたのは
ちょっと得した気分だった。
垣根の向こうには、と、想像しながら風呂に浸かる。幸せだ。
風呂上りのアイス、は食べなかった。温泉前にあった変な看板。
ふひい。ひとっぷろ浴びてさっぱりし、駅の、今時嬉しいクーラーがガンガン効いた待合室で電車を待っていたが、こんなぬるま湯につかっていてはいかん(温泉だけに)、と、付近を探索。足湯を近くに発見したので、これでおさらばだと、ちゃぽちゃぽ足を湯につける。
いいぞ。ちゃぽちゃぽ。いいぞいいぞ。
これでもう、後悔はない。間も無く電車がやってきたので、乗り込む。
さよなら城崎温泉。
さよなら浴衣駅員。
さあいよいよ目的地へ!
しかしここでまたも誤算が。何とまた逆方向の電車に乗ってしまったのであるギニヤー。
ローカル電車はそんな個人の都合などお構いなしにひた走る。
それにしてもどこへ向かう?山陰本線よ。Googleマップを開いても、Wi-Fi圏外だよ。仕方なく3Gで開くとん?日本海だ。モグタングーグルタン、ここはどこ?ここはね、と、次の駅は佐津、とある。
なんだかわからんが、降りてみた。
佐津駅
駅を降りたら、全く人けのない街だった。しかも無人駅だったよ。
無人駅ってことは。ね。降りたよ。
で、刻表を見ると次の便は30分後。30分たったら999は行ってしまう。
幽霊の駅員さんの忠告を振り切って、星野鉄郎の心境で街を探索や。
探検発見知らない街を歩いてみたい。
・・・。
いけども行けども街に人はいない。
駅前のメインストリートにあるこの寂れたストアを見よ。
3GGoogleマップを頼りに海への道を歩く。途中で3Gも切れた。
だんだんと潮風が、俺の頬をかすめる。本能の赴くまま
潮の香りを頼りに歩く。くんくん。
出た。
プライベートハーバーである。本当に人は1人もいないのよ。
久しぶりの海。日本海は十数年ぶりだ。
とりあえず、足だけ浸かる。ひんやり気持ちいい。
誤算の理由が分かった。寄り道途中下車の意味が分かったよ。
ずっとここでポーッとしていたい。いつまでもここにいたい。
この辺に宿を取ろうかともおもったが、目的地はここではない。
後ろ髪引かれる思いで、海を後にする。
電車まであと15分ほどある。
田んぼ街の真ん中に空いているストアを見つけたので、ちょいと一休み。
初音ミクの有線が流れる田舎のストアで、三ツ矢サイダーとビスケットを購入する。
田んぼを見ながら、東京以来吸っていなかったタバコを吸う。
三ツ矢サイダーも飲む。
農家のじいちゃんが軒先で爪を切っている。
頭の中では、そう。新日本紀行のBGMが頭の中で流れている。
海も山も田んぼもある。ここは日本だ。
ディスカバージャパンだよ。
もしかしたらここで一生を終えても、それはそれで幸せかもしれない。
なんてったって、のどかだ。もんもんもこもこの夏だ、それに。
こんな素晴らしいところ、もう二度とくることはないだろう。
なんてったって目的地に向かわなければならないからね。
思わぬ誤算の素晴らしい駅をあとにする。
そろそろ夕方だ。大分軌道を外したが、城崎温泉、豊岡を抜け、やっとこ目的地に着いた。
植村直己冒険館である。
ここ最近、彼の著書を読み漁っていて、それが遠く離れたここまで導いてしまった。
ずいぶん遠い旅路だったが、なに。彼のグリーンランド北極圏犬ぞり1万3000キロに比べたら鼻くそみたいなもんだ。
ほんでこの冒険館。閉館間際に入ってしまったものの、丁寧に館内を案内してもらった。
氷河のクレバスをイメージしたという冒険館入口。
世界のナオミの臭いが染み付いた貴重なグッズの数々、錆び付いたピッケル、犬ぞり現物、重さ30キロのリュックサック、アザラシ皮のムチ、汚れたダウンヂャケット、特注一眼レフカメラ、トナカイの毛皮まで。どれもが昭和のまんまだった。
とりわけ10分ほどの自伝映画は見ものだった。貴重だった。
植村直己にまつわる
小学校のころの記憶。
彼がマッキンリーで消息を絶った頃、テレビで明治大学山岳隊が捜索している番組を放送していたのをよく覚えている。1人で山に行って遭難して、迷惑をかけてなど、誰も口にしなかった。
彼はヒーローだった。
高校の頃、友達がウィンダムヒルというニューエイジ音楽を教えてくれた。
ウィンダムヒルがブームのころ「植村直己物語」の映画音楽を担当していた。
「植村直己のテーマ」フィリップアーバーグは、単独の音楽としても大好きだった。
今、地球をすみずみ冒険したって
個人の胸には残るかもしれないが、自慢にはなるかもしれないが
行く先々はすでに先人達の足跡がペタペタとついてしまっている。
植村直己の冒険は、それぞれにドラマがあり、オリンピック並みの新記録があり、知らない間に責任をしょっていた、国の威信もあった。5大峰制覇、アマゾン筏下り、それに飛行機の時代に犬ぞり北極圏制覇。一体なんなんだとも思ってしまうが、そこは彼のアイディアでもあり、タレント芸術家並の伝えるセンスでもある。
音楽作品でヒットは出していないが、映画の中ではやたら輝いている内田裕也みたいなもんか。
もしも冒険に失敗したら?
のしかかる責任感はただもんじゃなかっただろう。そんな職業のヒーローがかつての日本には存在した。日本のバブルの始まりは、彼の消息後のことである。
現在、温暖化の影響で、犬ぞりで北極海を走ることなど、まず出来ないそうだ。
それにろくに食べさせないで犬をムチでぶんぶん叩くなど、どっかから訴えられても仕方がない。
彼は未来にも足跡を残した。もう誰もマネ出来ないという意味でも。
そして彼の著書の面白さ!これに尽きる。
「青春を山に賭けて」、は、小沢征爾の『僕の音楽武者修行』に匹敵する面白さだ。
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お金が無くても、世界の5大峰を登ることもできるし、北極点に立つこともできる。
そんなことを、この本は教えてくれる。
やる気にさせる何かを分けてくれる。
まるで動物が死に際、姿を隠すかのように消えていった植村直己の
常に目標があって、孤軍奮闘する姿はユーモラスだ。
ここまで書いても、どうしてここに来てまで彼を追い求めたのか
本当のところは分からない。
でも何か掴んだ気がしたね。
しみじみと冒険館を堪能し、帰りの間際に
植村直己特製小銭入れを購入。なぜかこれが欲しかった。
汗もかいたのでTシャツを買った。
いいところへ来た。
自分の夏休みはもうこれで十分だ。
夕闇迫るころ、京都に戻る。素敵な旅をありがとう山陰本線。
今回の旅で大活躍してくれた、新しいiPad、古いiPhoneにも感謝。
おまけ1
冒険館までバスに乗ったが、運転手になんども、冒険館にはこのバスでいいのか
と訪ねたのを覚えていたらしい。冒険館から出ると、偶然通りかかったさっきのバスが
クラクションを鳴らして道で自分を待ってくれたのは嬉しかった。
おまけ2
帰りの京都駅で、八条口が分からず。ちっちゃい猫みたいなお姉さんに道を聞いた。
聞いてもわからず駅周辺でぶらぶらしていたら、走ってやってきて、丁寧ににこにこと
教えてくれた。京都人の印象が変わるような。明るくていい人だった。
おわり。